自分で講座案内を書く際の「落とし穴」

 

*本記事は 高橋龍征氏のnote記事をご本人の許諾を得たうえで加筆/転載した記事となります。
高橋龍征氏との共同でセミナー企画・集客のご相談を受け付けています。
是非お気軽にお問い合わせください。

約400件のセミナーの案内文を作成・添削した経験に基づく「より良い案内文」作りのポイントをお伝えします。

今回は、講師自身が案内文を書く際に陥りがちな落し穴です。

 

「前置き」から始めてしまう

 

例えば以下のような書き出し。

「ビジネスが複雑化し、変化が激しくなった現在、多くの仕事はプロジェクトのような進め方になりました。しかし、利害関係の異なる複数部門のメンバーのメンバーを取りまとめるのは大変です。既存のファシリテーション手法は・・・」

案内文が想定すべき読み手は「SNSで偶然目にした」だけの人なので、このような、報告書のような「相手が読んでくれる前提」で書かれた前置きはスルーされます。

たまたま目に入っただけの流し読みでも、ターゲットとする層に「お、これは私に役立つかも」と反射的に感じさせ、それ以降の文章を読ませるのが、タイトルや冒頭文に求められる役割です。

よって、最初に端的に「どんな講師が何をどう教え、どんな人にどう役立つか」という「フックの伴う中身」を提示する必要があります。

議論を「見える化」する技術

現役プロジェクトマネージャーが実践する、リアルタイムで議論の要点を構造化・可視化する技術の基礎を体得します。

自分の「優越性」を説明してしまう

 

講師になるくらいの人なら、アピールポイントが沢山あり、つい色々書いてしまいがちです。

「XX大学を出て、XX社に入社し、XXという実績を上げ、XXという賞を取り、XXXに留学してXXXを取得後、最年少でXXとなり・・・」

しかし、教える内容との関連性が不明確なものが数多く並んでいると「どうだ、俺はすごいだろう」と言っているように思われます。

当人にそのつもりはなく、アピールポイントを無意識に盛り込んでしまっただけだとしても、読み手の判断材料は案内文の文章だけで、書き手の意図は忖度されません。

読み手の「それがこの講座を教えることにどう関係あるのか」「自分の価値にどう繋がるのか」という疑問を解決するものに絞り、簡潔に示すくらいにとどめましょう。

講師は新サービス企画、大規模システム開発から炎上案件対応まで多様なプロジェクトをリードしてきた、情報工学科出身・現役ITエンジニアのXX氏。

「違い」「問題」ばかりで内容がない

 

「デザイン思考ではイノベーティブなアイデアは創出できません」
「世界的にすでに時代遅れのデザイン思考を有難がるのは日本企業だけ」

もしこの読み手がそれらに該当するとしても「だから何だ、どうすればいいんだ」としか思えません。

それに対する具体的な解決策やその根拠が示されなければ、その講座が価値あるか判断できないでしょう。

「ものごとを因数分解し、異質の組合せから新結合のアイデアを発想する」思考法をレクチャーします。特に”0→1”のために「デザイン思考」を試行したものの違和感を感じている方には、新たな発想を得るものになります。

「それが何か」が書かれていない

 

これら全てに共通するのが、コンテンツの具体的な内容が書かれていないことです。

そうなる原因は、他との違いや自分のこだわりを盛り込み、正確に説明したいと思うがあまり、前置きや違いが多くなるからです。

一方、知りすぎているが故に割り切って説明できない、あるいは、自分にとって自明すぎるため説明不足の一言で済ませてしまう、ということもあります。

さらに、説明はターゲットの理解度や関心に合わせて構成されなければうまく伝わりませんが、そのターゲットの解像度が低いとそれができません。

具体的にどんな困りごとを感じていて、どんなキーワードにどういう観点で反応するかがわからなければ、何をどんな順番でどこまで示し、何を割り切るかの判断ができません。

そうなると、万人に引きの強そうな経歴、学歴、実績を列挙してしまうのです。

 

流し読みされる文に多くの文字数は入れられない

 

理想は「目に止まった瞬間に、中身を読もうと思える」「流し読みをして、参加に値すると判断し、申込のアクションまで一気に持っていける」というものです。

流し読みできるためには、限られた文字数で、前提知識がない人でもすぐに頭に入る構成と表現で書かなければなりません。

そのために必要な要素は以下の3点です。

1)ターゲット観点で要素を絞り、自明のことは省く
2)「そのもの」の説明の中に入っているようにする
3)文章による説明ではなく、修飾語句で端的に示す

ここで最も重要なのは、ターゲット(その講座を受講して価値のある相手)の観点で情報を取捨選択することです。

限られた文字数の中には、ターゲットが意思決定するのに必要ない情報を入れる余地がないからです。

その上で、「中身」を中心に説明し、その価値と差異化への理解を助けるために、簡潔な語句を修飾的につけるイメージです。

 

まずは「ターゲット理解」と「素材列挙→取捨・優先順位」

 

最初から文章にすると上記の状況に陥るので、まずは以下の素材を整理します。

1)読み手の解像度・属性、目指すもの
・状況・課題・原因の認識、試行錯誤、解決策の仮説
・フックとなるキーワード(仮)

2)読み手にとっての信憑性に繋がる自分の材料
・テーマに関するプレイヤーとしての経験・実績・評価・方法論化
・「人ができるようにする」立場としての経験・実績・評価・方法論化
・差異化=相手に価値ある希少性を実現する、補強材料や掛け合わせ

読み手の関心を基準に自分の材料を選別し、優先順位をつけると、要点が整理できるでしょう。

 

ポイントを整理して、流れを作る

 

読み手の視線や心理の流れでいえば、まずはスマホなどでタイトルやサムネイルふと目にした時に「お、これは私に役立ちそうだ」と思い、リンクをクリックしてもらうことです。

そして、開いた案内文の冒頭を流し読みして「この講師のこの方法論をこのように習うなら、自分でも困りごとを解決できそうだ」と思ってもらうことです。

 

1)自分が読む必要があるかの判定
→フック

・どんな人のためのものか→自分のためのものか
・課題→原因仮説/解決メカニズム→実現すること→自分にとっての価値
・既存のものとの違い

2)価値が実現可能そうかの推定
→信憑性
・講師:テーマとの整合→実績→卓越
・方法論=自分も効果が出る根拠

その上で、読み手の視線・思考・心理を推測しながら、基本は頭から読むように文章を構成します。

以下は「ハーバード」「Google」「XX賞」のような、その言葉だけですごそうに感じさせる材料がなくても、届けるべき相手にとってのフックと信憑性があるように構成できます。

議論を「見える化」する技術

現役プロジェクトマネージャーが実践する、リアルタイムで議論の要点を構造化・可視化する技術の基礎を体得します。

講師は新サービス企画、大規模システム開発から炎上案件対応まで多様なプロジェクトをリードしてきた、情報工学科出身・現役ITエンジニアのXX氏。

グラフィック・レコーディング(*)を工学的に解析して現場での洗練を重ね「誰でもできる」実践的な方法論にしました。
*会議の内容を文字・絵図等でリアルタイムに記録する知的生産術

議論の要点を抽出・構造化し、伝わるように表現するトレーニングに重点を置くので、絵を本格的に描くまでではない人にも役立ちます。

一発で「正解」を狙わず、改善を重ねる

 

文章を練りに練っても、必ずしもターゲットに刺さり、目的を達成できるとは限りません。

想定とは違う層が反応するかもしれません。狙ったターゲットが来たとしても、自分が考えていたのと違うポイントが刺さったのかもしれません。

色々な変数があり、何がどう噛み合うかは、実際公開してターゲットに当てて見ないと分からないからです。

当てずっぽうで数を打っても意味はありませんが、何が誰にどう刺さるか、仮説を持った上で、言葉や順番を替えて、実際の狙い通りの結果になるのか検証し、想定との差異があれば、改善を重ねていくことで、完成度を高めていくのです。

最初期の作りたてなら、できればターゲットに近い属性の身近な人に流し読みしてもらい、どんなふうに解釈したか、どんな疑問が生じたか、何に魅力に感じ、何はどうでもいいと思ったかなど、率直な印象を聞いてみるといいでしょう。

 

参考記事:コピー、タイトル、セールスライティング

 

コピーライティング、タイトルの付け方、セールスライティングなどは参考になります。

未来のシナリオを創る、人を動かす方法論 ~1. What to say:人の行動をシフトさせる、コピーライティングの基本

【簡単】読まれる「記事タイトル」の付け方21パターンを徹底解説

 

ただし、書籍、消費財、記事などは対象が広いため、講座案内と比べればより汎用的な課題にフォーカスしなければなりませんが、講座案内は基本的にはより絞り込まれた対象に向けたものになるので、具体性がより高めた方が良い場合も多い、という前提の違いがある点、注意が必要です。

 

 

 

ご参考:セミナー企画全般について

全体像は以下にまとめておりますので、ご興味あればご覧ください。

 

 

◆執筆者 高橋龍征 / Takahashi Tatsuyuki

conecuri合同会社 代表 WASEDA NEOプロデューサー 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授

大手システムインテグレーターの営業、経営企画を経験後、MBAを経て、ソニー、Samsungで事業開発を中心としたキャリアを歩み、事業創造支援家として独立。インキュベーター立ち上げや欧州企業の日本進出を支援後、スタートアップ共同創業(取締役COO)を行う。

早稲田大学の社会人教育事業「WASEDA NEO」プロデューサー就任を機に、事業開発や人材育成のためのセミナーづくりを本業とし、大学、企業、メディアからの受託や自身主催で、年間200件の企画を実現するようになる。

2020年、conecuri合同会社を設立。マーケティングセミナーの企画、社会人向け講座や企業研修の開発、それらを通じた事業創造を支援している。

新型コロナを機に、セミナーを一気にオンラインにシフトさせ、その知見を『オンライン・セミナーのうまいやりかた』として出版した。

また、13年以上複数のコミュニティ運営に携わる実践家として、大手企業や学校のコミュニティづくりも支援している。

早稲田大学 第一文学部 哲学科 東洋哲学専修 卒業 早稲田大学大学院 ファイナンス研究科 修了 青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム 修了 JVCA ベンチャーキャピタリスト研修 修了

 

◆著者プロフィール

株式会社まーけっち 代表取締役社長 山中思温

マーケティングリサーチのシステムとデータの提案営業を経験後、 最年少で事業部を立ち上げ、若年層国内ナンバーワンのユーザー数を達成。
リサーチの重要性と併せて、コストや施策への活用の課題を痛感し、中小・スタートアップでもリサーチやマーケティング施策の最適化をより手軽に利用できるようにする為、リサーチ×マーケティング支援事業の”株式会社まーけっち”を創業。

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