PMFとコミュニティ〜前は応援・後は布教

 

 

*本記事は 高橋龍征氏のnote記事をご本人の許諾を得たうえで加筆/転載した記事となります。
高橋龍征氏との共同でセミナー企画・集客のご相談を受け付けています。
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コミュニティは漢方薬のような長期的・間接的効果があるもので、直接効果測定が難しい部分があります。

その上、PMF(Product Market Fit、自社のプロダクトやサービスが市場に刺さった状態)の前と後では、コミュニティを通じて何を実現するのかが異なります。

この前提を区別せず「コミュニティ作らなきゃ」と考えて、不十分なものを無理に広めようとすると逆効果になります。

本稿では、PMF前後のコミュニティの違いと注意点を考えてみます。

 

前は応援団、後は布教者

 

PMF前、即ち、プロダクトが顧客の課題を解決できる十分なレベルに達する前は、そこに達する応援を受けるためにコミュニティは活用されます。

 

プロダクトとしての水準に達したPMF後は、ファンに布教してもらうことが目的になります。

PMF前)知恵や手間をもらう
→プロダクトの完成
PMF後)素晴らしさを広めてもらう
→プロダクトの拡販

注意:ファン「に」売るのではなく、布教してもらう

 

最終目標は拡販であるものの、ファンの人々に売り込む(Sell to the community)のではありません。

熱狂的なファンが、頼まなくても自ら素晴らしさを熱く語り、それに触発された人々がユーザーとなりファンとなり、さらに布教が広まる(Sell through the community)お膳立てをするというものです。

発想が全く異なるので注意が必要です。

 

PMF前の「応援」コミュニティ

 

この段階のコミュニティは、プロトタイプを一般のユーザーがお金を払って使ってくれるレベルまで育てる「応援団」。

自分にとって切実で解決のハードルが高い課題に取り組むことや人を応援する人々です。

課題解決そのものやそこにチャレンジする心意気への共感を軸に集まり、一緒にプロダクトを共に作り上げていくことを楽しみます。

この段階では、プロトタイプはまだできていないか、出来ていても到底普通の人からお金をもらえるレベルではないでしょう。

しかし、中には物好きもいて、そんなレベルのものを自分も一緒になってプロダクトとして育てることに喜びを感じる初期ユーザーというものがいます。

イノベーション理論で言えば最初の2.5%「イノベーター」。

 

そういう人々が、以下のような「応援」をしてくれます。

  • 自分の困りごとを詳しく教えてくれて、課題の解像度を上げてくれる
  • 仮説やプロトタイプに対して、具体的な改善策まで提案してくれる
  • 手を動かして一緒にプロトタイプを作ってくれる
  • 上記に巻き込まれてくれる人や必要な人を紹介してくれる

 

「応援」フェーズの評価は「質」

 

この段階は量より質で、ちょっとしたアドバイスをくれる人が100人いるより、本質的な改善策を本気で山ほどくれる人が1人いる方が、よほど効果的だったりします。

そもそも、作るものや取り組む課題を変える可能性も十分にあります。

KPIとして、そういった人のレベルや人数、出てきたアイデアの数や質で可視化できる気もしますが、実際は、1人や1つのアイデアが、状況を大きく変えるものです。

KPIは、定めたとしてもあくまで「目安」で、それに引っ張られない方が良いでしょう。

 

PMF後の「布教」コミュニティ

 

プロダクトして成立したら、世に言うコミュニティマーケティングの世界です。

ファンが自主的にプロダクトの良さや使い方を見出したり広めたりして、新しいユーザーを開拓し、ユーザーを更なるファン化していくサイクルが連続的に波及していく状態。

この段階でのKPIについてはコミュニティマーケターの宮本さんが分かりやすい記事を出しているので、そちらをご参照下さい。

 

ゴミを布教すれば、悪評が広まる

 

注意すべきは両者を混同しないことです。

PMF前のものを布教してはなりません。

PMF前のプロトタイプは、「応援団」を除く一般のユーザーにとっては、使うに値しないもの、対価を払うに値しないもの。

それを無理に買わせて残るのは、
「無駄金を使わされた」
「時間を浪費した」
「釣られた、盛られた、騙された」
という悪感情です。

まあ、そんなものを自ら好んで勧める人は普通いないので、布教サイクルが回ることはないでしょう。

ただ、コミュニティを作らなければと思って、自らの作ったガラクタを熱心に広めようとしても、一時的に売れたところで、リピートはあり得ず、騙されたと思う人を通じて悪い評判が広まります。

PMF前は、ユーザーやファンの獲得ではなく、応援団を募ることを意識した方が良いと思います。

 

◆執筆者 高橋龍征 / Takahashi Tatsuyuki

conecuri合同会社 代表 WASEDA NEOプロデューサー 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授

大手システムインテグレーターの営業、経営企画を経験後、MBAを経て、ソニー、Samsungで事業開発を中心としたキャリアを歩み、事業創造支援家として独立。インキュベーター立ち上げや欧州企業の日本進出を支援後、スタートアップ共同創業(取締役COO)を行う。

早稲田大学の社会人教育事業「WASEDA NEO」プロデューサー就任を機に、事業開発や人材育成のためのセミナーづくりを本業とし、大学、企業、メディアからの受託や自身主催で、年間200件の企画を実現するようになる。

2020年、conecuri合同会社を設立。マーケティングセミナーの企画、社会人向け講座や企業研修の開発、それらを通じた事業創造を支援している。

新型コロナを機に、セミナーを一気にオンラインにシフトさせ、その知見を『オンライン・セミナーのうまいやりかた』として出版した。

また、13年以上複数のコミュニティ運営に携わる実践家として、大手企業や学校のコミュニティづくりも支援している。

早稲田大学 第一文学部 哲学科 東洋哲学専修 卒業 早稲田大学大学院 ファイナンス研究科 修了 青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム 修了 JVCA ベンチャーキャピタリスト研修 修了

 

◆著者プロフィール

株式会社まーけっち 代表取締役社長 山中思温

マーケティングリサーチのシステムとデータの提案営業を経験後、 最年少で事業部を立ち上げ、若年層国内ナンバーワンのユーザー数を達成。
リサーチの重要性と併せて、コストや施策への活用の課題を痛感し、中小・スタートアップでもリサーチやマーケティング施策の最適化をより手軽に利用できるようにする為、リサーチ×マーケティング支援事業の”株式会社まーけっち”を創業。

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